悪しき令嬢の名を冠する者
「新開発の花らしくてさ。黒い睡蓮。名前を〝ヴァサーリーリエ〟というみたいだよ」
老父の言葉に目を瞠る。耳馴染がいいどころじゃない。反射的に辺りを見渡すも、いつも通りの風景が広がっているだけだった。
「コレを運んできた人に心当たりは!?」
「え? 初めて見る兄ちゃんだったけど……夫婦みたいで、小さな子供を連れてたよ。レジフォルニアから人を探しにきたんだと」
夫婦という単語に疑問符が浮かぶ。あの中で誰かが生き残っていたとして、所帯を持っているだなんて想像出来なかった。
それでも僅かに芽生えた可能性は捨てきれない。誰でもいいから、もう一度会いたかった。
「ヴァサーリーリエ買うから、ちょっとキープしていてちょうだい!」
「あいよ」
笑って手を振る老父に手を振り返す。市場を走るも知っている背中は見つけられなかった。
老父の言葉に目を瞠る。耳馴染がいいどころじゃない。反射的に辺りを見渡すも、いつも通りの風景が広がっているだけだった。
「コレを運んできた人に心当たりは!?」
「え? 初めて見る兄ちゃんだったけど……夫婦みたいで、小さな子供を連れてたよ。レジフォルニアから人を探しにきたんだと」
夫婦という単語に疑問符が浮かぶ。あの中で誰かが生き残っていたとして、所帯を持っているだなんて想像出来なかった。
それでも僅かに芽生えた可能性は捨てきれない。誰でもいいから、もう一度会いたかった。
「ヴァサーリーリエ買うから、ちょっとキープしていてちょうだい!」
「あいよ」
笑って手を振る老父に手を振り返す。市場を走るも知っている背中は見つけられなかった。