悪しき令嬢の名を冠する者
「心配かけたな。レイニー」
「レイニー様、泣かないでください」
ヴィンスとフィンの声が降ってくる。もしかしたら夢かもしれないと逡巡し、顔を上げるのを躊躇っていれば身体が浮いた。
「泣かないでリーリエ。皆さん一旦場所を移動しましょう。とても目立っています」
「リーリエちゃんどうかしたのかい?」
「いえ、なんでもありません」
「なんだコイツら見たことない顏だぞ! リーリエを泣かしたら俺がゆるさないんだからな!」
いつも花を一輪くれる男の子の声が聞こえる。「痛っ」というヴィンスの声から想像するに、蹴りを入れられているのだろう。
「大丈夫だから。ヴィンス様を蹴らないであげて」
横抱きにされたままユアンの胸に顔を埋めていても、騒々しさが手に取るように分かる。市場の中で喧騒に揉まれた私達は、そのまま近くの野原へ向かった。
「レイニー様、泣かないでください」
ヴィンスとフィンの声が降ってくる。もしかしたら夢かもしれないと逡巡し、顔を上げるのを躊躇っていれば身体が浮いた。
「泣かないでリーリエ。皆さん一旦場所を移動しましょう。とても目立っています」
「リーリエちゃんどうかしたのかい?」
「いえ、なんでもありません」
「なんだコイツら見たことない顏だぞ! リーリエを泣かしたら俺がゆるさないんだからな!」
いつも花を一輪くれる男の子の声が聞こえる。「痛っ」というヴィンスの声から想像するに、蹴りを入れられているのだろう。
「大丈夫だから。ヴィンス様を蹴らないであげて」
横抱きにされたままユアンの胸に顔を埋めていても、騒々しさが手に取るように分かる。市場の中で喧騒に揉まれた私達は、そのまま近くの野原へ向かった。