悪しき令嬢の名を冠する者
「まぁ、いいわ。私はお父様に遊ばれていただけなのね。
 フィン。私……お前にずっと訊きたいことがあったのよ」

「なんでしょう?」

「あの時、なんて言ったの?」

「あまり言いたくないのですが……」

「フィン、早く」

「はい。〝幸せになって〟と」

 優しさに胸が熱くなった。私はフィンを信じてなどいなかったというのに、彼は変わらず私の先を案じていたとでも言うのだろうか。

 これだから感違いしてしまったのだ。一〇〇%の信頼。一〇〇%の愛情。けれども全ては主従関係の上に成り立っているもので、〝恋愛感情〟とは違う。

 やはり知らないとは怖いことだ。
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