悪しき令嬢の名を冠する者
「俺からも一つ、よろしいでしょうか?」

「構わなくてよ」

「あの時は申し訳ございませんでした」

 深々と頭を下げる彼の髪を風が攫っていく。繊毛を眺めながら頭を上げるように促すと、潤んだ瞳で私の様子を伺う彼が居た。

「私を守るという誓いを最後まで守ろうとしてくれていたのよね?」

「……俺はアンタの意思を無視して……」

「あら? お前は私に恥ずべきことをしたと思っているのかしら?」

「お変わりありませんね」

「私は私だもの。〝レイニー〟でも〝リーリエ〟でも私は私」
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