悪しき令嬢の名を冠する者
「フィン、私はお前を好きだと思っていたの」

「え?」

「でも違うわね。一生懸命守ってくれるお前に恋をしてると勘違いしてただけだったわ」

「……レイニー様……」

「私はユアンが好き。だから気持ちには応えられない。それだけ伝えたかったの」

「……俺のは勘違いじゃありませんでしたよ」

 木々が揺れる。突風に目を瞑れば青の匂いが駆け抜けていった。
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