悪しき令嬢の名を冠する者
「なにか言ったかしら?」

「いいえ。今、幸せですか?」

「ええ!」

 フィンの言葉は聞こえないフリをした。勘違いでなければないほど、私は彼を縛ってしまう。

「フィン、お前はもう私を守らなくていいわ」

「ご命令とあらば」

「命令よ」

 だから解放しよう。私にはもう鎖を付けなくても手を繋いでくれる相手がいる。
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