悪しき令嬢の名を冠する者
「泣くのは殿方の前だけになさい。私じゃ何も誘えなくてよ? 貴女は他国の客人ね。部屋まで案内してくださる?」

「む、り……」

 一言告げるだけでも辛い。触れらると危ういほど、私の身体は限界だった。

「少し失礼するわね」

 彼女は、そう告げると背後へ周る。

 何をするつもりだろうか、と浅い呼吸で考えていれば、腹部の拘束が徐々に緩くなっていくのが分かった。
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