悪しき令嬢の名を冠する者
「ごめんなさいね。緊急事態のようだったからコルセットの紐を切らせてもらったわ。でもよかった。貴女の為に作られたドレスで」

「え……?」

「この国では、あまり流行してないのよ。背がコルセットのようになっているデザインのドレスは」

「どういう意味ですの?」

「コルセットは下着だから、ドレスの下に身に付けて締め上げるのが普通なの。
 でも貴女のはドレス自体に、その仕掛けがしてあるのよ。部屋に戻って見てみるといいわ。リボンで編み上げるようになっているから」

 彼女の言葉が分からない。華美な衣服を身に付けることのなかった私には未知の世界だった。
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