悪しき令嬢の名を冠する者
「そこには、あらゆる者が集います。民は勿論。貴族。軍人。そして王子も」

「お待ちなさい。そこに王子もいるって言うの?」

「ええ」

「じゃあ王子も……」

「いえ。彼は協力する気もなければ、非協力的なわけでもないのです」

「どういうことなのかしら」

「レイニー様と同じことを言ったのは王子です。彼はこうも言いました。『お前らが動こうが動くまいが、俺が生きている間にこの国は滅ぶ。早いか遅いかだけの話だ』と」

「その通りね。今の財政状況なら〝二十年〟という話だもの。民が発起するのに掛かるのも恐らくそのくらい。周りの国との均衡が保てなくなるのも二十年が潮時。同盟を組んでいる国が攻め込んでくるなら、もう少し早いかもしれないわね」

「そこまで分かっているのですか」

「ええ、前からそのくら……」

 そうだ。私は知っていたのだ。この国がいつかは滅ぶことを。そして今迄の知識と、前世の事象を照らし合わせて〝予感〟が〝確信〟に変わった。

 何故なら、この国の歴史はあまりにも前世の国に似ているから。私が産まれてから死ぬまでの約二十年弱。その0の歳に起こったことが今まさに起ころうとしている。

〝レジスタンス結成〟の歴史的瞬間が。

 ――どうして私は、こんなことを知っているの?
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