悪しき令嬢の名を冠する者
「何も分からないんですの……」

「え?」

「私、何も知らないの……テーブルマナーも、作法も、ダンスも、祖国にいた頃はやったことが無かったの……だから、違うことばかりで、もう……」

「随分と甘えたことを仰るのね」

 非難される。そんな思いで床を見つめ身を固くする。しかし、言い返す気にはならなかった。

 私が何かを言ったところで、まともに取り合ってもらえる筈がない。

「知らないなら知ればいいのよ」
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