悪しき令嬢の名を冠する者
「こんなところにいらっしゃったんですね! 次は私と踊ってくださいませんか? 貴女の為に真っ赤な薔薇の花束を用意したんです。素晴らしいでしょう? 美しい貴女に相応しい」

「まぁ、とてもいい香りね」

「ではホールに参りましょう。私がエスコート致します」

「ふふ、あとでちゃんと伺うわ。私を見つけてね?」

「え、ええ!」

「では、先に戻っていてくださる? 薔薇をフィンに預けたら伺うわ。コレは貴方の気持ちだもの。大事にしたいの」

「はい! では後ほど!」

 興奮したように目をぎらつかせる男は私に目もくれない。頬を薔薇色に染めながら、慌ててホールに向かう様は滑稽だった。
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