悪しき令嬢の名を冠する者
「早かったわねって……最近は真面目にやってるかと思って少し目を離した隙に……」

「お前が目を離したのが悪いのよ。自業自得ね」

 悪戯っ子のような顔で彼女が刺々しい言葉を放つ。恋人だろうか、と男を眺めていれば目が合った。

「申し訳ありません。失礼しました。体調でも優れないんでしょうか?」

「あ、い、いえ、もう大丈夫ですわ! そちらの……その……お嬢様のおかげで……」

「レイニー様の?」

「男には所詮理解できないことよ。
 そういえば名乗っていなかったわね。私は……いえ、やっぱり名乗るのはやめておくわ。
 貴女が素敵なレディになったら、可愛らしいお辞儀で私に挨拶してちょうだい」

 彼女の言葉に目を瞬く。僅かに唇を歪めた美少女は、私に挑戦状を突き付けた。
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