悪しき令嬢の名を冠する者
「それとコレ、差し上げるわ」

「でもコレは貴女が頂いた……」

「赤いバラの葉にはね。無垢の美しさ、あなたの幸福を祈る。
 葉全般には、あきらめないで、頑張って、あなたは希望を持ち帰るって意味があるのよ」

「え?」

「あきらめないで、頑張ってね。幸福を祈っているわ。貴女へのエールよ。
 それでは、これで失礼するわ。フィンが怖いんだもの」

「アンタはまたそういうことを!」

 楚々とした背中が遠ざかっていく。苦言を呈す彼が、その後を追い、私は一人ぼっちになった。

「花言葉は〝あなたの幸福を祈る〟……またお会いしたいわ。エレアノーラ様」



 それが私とエレアノーラ様の邂逅だ。その後、城で出会った彼女は私のことを覚えていなかった。だからこそチャンスだと思った。

 これで一から始められる。素敵な淑女(レディ)の友人として。
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