悪しき令嬢の名を冠する者
「貴女も中々、破天荒よね」

「そう、かしら?」

「ええ。前から思っていたのよ。その〝素直さ〟が羨ましいってね」

「エレアノーラ様が羨ましい……?」

 他人を羨むだなんて、彼女には似つかわしくない行為だ。私が先を促せば、ゆるりと続きを紡いでくれた。

「私は今でも〝命令〟してしまうのよ。
 ユアンも〝護衛係〟だった時のクセが抜けないんでしょうね。素直に利くの。それがほんの少し嫌なのよ。私はユアンの隣に立っていたいのに、彼はそれを貫いてはくれない。
 相手にばかり求めるのが間違いだということは分かっているの。それでも彼はちょっと自尊心が低すぎるのよね」

「それを伝えたりはしませんの?」

「伝えたら、絶対〝はい〟って言うでしょう? 私が求めているのは、そういう愛じゃないのよ」

 やはりエレアノーラ様とは頭の作りが違うらしい。些か理解に苦しむ悩みを吐露する彼女の力になりたいと、私は一生懸命考えを巡らせた。
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