悪しき令嬢の名を冠する者
 何回かそうした頃。関係に変化が生じる。俺達はお互いを〝リー〟〝ベル〟と呼ぶようになったのだ。

 逢瀬は、けして多くなかった。両の指で数えきれるほどの回数に僅かな時間。それでも俺達は確かに〝恋人〟だった。

 幸せだった。凄く、凄く、凄く。人を愛する喜びを知って、会えない痛みを重ねて切なさを覚えた。

 永遠に続くわけがないと思ってはいても、心のどこかで期待していたのだ。〝幸せ〟は止まらないと。



 ——そして俺は人生最悪の日を迎える。
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