悪しき令嬢の名を冠する者
「ちょっと~、お父様とも感動の再会しようよ! レイニー!」

「ええ! お父様!」

 俺の横を駆ける様に忙しないなぁ、と眉尻を下げる。

 いい歳こいてテンション高いな、このおっさんと思っていれば、エレアノーラ嬢がヴェーン侯爵様の腹部に拳を入れた。

「うっ!?」

「お父様、私ね。帰ったら一発殴ってやろうかと思っていたのよ」

「出会い頭に酷いよ……可愛い娘(スイートエンジェル)……」

「『俺の娘を危ない目にあわせやがって』だったかしら? 私からすればね、私の大切な人をよくも傷付けてくれたわね、という感じだわ!」

 怒気を露わにエレアノーラ嬢は声を張る。唖然とする場の空気を置き去りにして、彼女は更に捲し立てた。
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