悪しき令嬢の名を冠する者
 だからこそ、この三年。私は己を磨いた。

 教養を身に付け、あらゆる貴族との繋がりを得、今では社交界で名を馳せる美しい令嬢だ。この美貌なら落とせない男などいないだろう。

 勿論、そんな単純な人間ばかりではない。そういう人には違う手段でアプローチを掛ける。

 必要なものは笑顔と知識、そして僅かな駆け引きだ。〝女〟も忘れてはいけない。私が私である為に必要な道具なのだから。

 人脈は広げた。知識も身に付けた。話術も、美しさも、手に入れられるものは全て手に入れた。やることは一つ。



 国を壊すこと。



 今やるべきは王子を此方側に陥落させることである。

 だから三年待った。酒場に酒も飲めない小娘が出向いては、門前払いを食らうに決まっている。十六の私なら問題もないだろう。

 この国の崩壊は既に始まっている。全てが壊れる前にコトを起こさなくては間に合わなくなる。

 だからこそ、どうか内部で治まるうちに決行しなくてはならない。レジスタンスの発旗を。
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