悪しき令嬢の名を冠する者
 脳内を最後まで占拠していたのは疑問符だった。



 何故。

 どうして。

 なんで。



 けれど、それが解明されることはなく、生温い液体に浸る。

 最後に見たのは私に意味不明な言葉を残した男の顔。微睡む意識の最中、耳に届いたのは誰の声か分からぬテノールだった。
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