悪しき令嬢の名を冠する者
「ベルナール、俺達はユアンに用があるんだ」

「ユアンとヴィンならポーカーしてるよ。〝賭け〟の最中なんだ」

「へぇ。せっかくなので見に行きますか?」

「……ええ」

 ベルナールと呼ばれた男がカウンターの中へ私達を引き入れ、奥に在る朱色のカーテンを開く。スタッフルームか何かだと見当を付けて逡巡していれば、フィンが私の前をすり抜けた。

「ほら付いて行って。大丈夫、怖いことは何もないよ」

「でもスタッフルームじゃ……」

「この奥は、ただの〝賭場〟見る分には、なーんにも問題はない。さぁどうぞエレアノーラ嬢」
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