悪しき令嬢の名を冠する者
「貴方、どうして私の名を」

「この舞台の立役者はお嬢さんだけじゃないんだよ。男だけの世界だ。身分を明かすのは控えて。例え言い当てらても頷いてはいけない。そこはちょーっと足りないかな」

「ベルナール。レイニー様にちょっかいを出すな」

「はいはい。フィンのお姫様に失礼しました。でもね覚えておいてエレアノーラ嬢」

「なに……かしら?」

「貴女は貴女であることを忘れてはいけない。裏切りの絶えない世界だと覚えておいて。此方側に来たら〝可愛いお嬢さん(フェアレディ)〟ではいられない。襤褸雑巾のように死ぬことがあると胸に刻んでおくんだよ」

「ベルナール、で良かったかしら? 私もそう呼んでも?」

「構わないよ」

「貴方がレジスタンスのリーダーなのは分かったわ。けれど試験にしては少し甘いんじゃないかしら?」

「甘い、とは?」

「手を見せすぎよ」

「え?」

 彼の目が大きく見開く。その隙に手を取ってニッコリ微笑めば、更に疑問符を浮かべたのが分かった。
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