悪しき令嬢の名を冠する者
〝賭け〟とは王子ヴィンセントとの情報交換を指す。情報交換と言っても彼が欲している情報は無いし、交換というには語弊があるかもしれない。
彼が声高々に宣言したのは「俺を楽しませられたら、その都度報酬を払ってやる」との一言だけ。
賭けの内容は多岐に渡り、酒の飲み比べ、腕相撲、トランプと統一性がない。最近は賭けの真似事が楽しいようで、よくレジスタンスのメンバーを誘っては奥でポーカーに勤しんでいた。
それすらも、もう飽いてきたのだろう。優秀な頭脳を持ち合わせている彼に、心理戦で勝てるわけもなく、ガタイがいいだけの男達は頭を抱えていた。
場には十人程。そんなに狭くない空間だというのに、やたら息苦しく感じる。眉根を寄せている様を鑑みれば、全戦全敗といったところか。
何周したのかは知らないが、空いたボトルは十ほど。やけ酒を煽ったのは言うまでもない。
それが愉快、とでもいうかのように王子は大口を開けて笑っていた。
一見すれば阿呆にしか見えないというのに、これすら自らが楽しむ為の演出なのだから恐ろしい。一体、何人の人間が彼の掌の上で転がされてきたのだろう。そう思えば自然と敬意が湧いた。
彼が声高々に宣言したのは「俺を楽しませられたら、その都度報酬を払ってやる」との一言だけ。
賭けの内容は多岐に渡り、酒の飲み比べ、腕相撲、トランプと統一性がない。最近は賭けの真似事が楽しいようで、よくレジスタンスのメンバーを誘っては奥でポーカーに勤しんでいた。
それすらも、もう飽いてきたのだろう。優秀な頭脳を持ち合わせている彼に、心理戦で勝てるわけもなく、ガタイがいいだけの男達は頭を抱えていた。
場には十人程。そんなに狭くない空間だというのに、やたら息苦しく感じる。眉根を寄せている様を鑑みれば、全戦全敗といったところか。
何周したのかは知らないが、空いたボトルは十ほど。やけ酒を煽ったのは言うまでもない。
それが愉快、とでもいうかのように王子は大口を開けて笑っていた。
一見すれば阿呆にしか見えないというのに、これすら自らが楽しむ為の演出なのだから恐ろしい。一体、何人の人間が彼の掌の上で転がされてきたのだろう。そう思えば自然と敬意が湧いた。