悪しき令嬢の名を冠する者
「どうせ、この国は崩壊する。早いか遅いかの違いでしょう? そこは貴方も同じ考えではなくて?」

「そうだな」

「私、傾国の美女になろうと思うの。悪女としては何よりの称号だと思わない?」

「その遊びに肩入れしろと? 随分ふざけた提案だな」

「ヴィンセント様は〝お遊び〟が好きでしょう? 〝楽しい〟ことも」

「ああ、好きだな」

「だったら〝気持ちいい〟こともお好きじゃない?」

「社交界で名を馳せたエレアノーラ嬢が娼婦にまで成り下がるか。この国に、そんな価値があるかな」
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