悪しき令嬢の名を冠する者
「な、なんですの!? 唐突に! 無礼ですわ!」

「俺の方が身分は上の筈なんだけどな」

「ココでは身分が関係ないと言ったのは貴方でしょう!」

「ああ。だから〝無礼〟なんてのは、野暮だと思わないか?」

「レディの髪に簡単に触れないでちょうだい」

「そういう君が見たかったんだ」

「え?」

「さっきみたいな〝悪女〟は似合わないと言ったんだ。気位の高い〝エレアノーラ嬢〟は嫌いではないが、どうせなら俺にだけ見せる君を知りたい。悪い条件ではないだろう?」

「それをすれば私に協力してくださるの?」

「ああ、〝バカ王子〟にも〝ただのヴィンセント〟にも飽きてきたところなんだ。国を壊して作るのは骨が折れそうだが、だからこそ面白い。
 ひ弱な女性が立ち上がったというのに、紳士が何もせずにいるわけにもいかないだろう?」
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