悪しき令嬢の名を冠する者
「ユアン、俺にも一杯」

「コレをやる。口を付けてないから」

「ラッキー!」

 カウンターの内側で結露した雫を指で撫ぜるユアン。ベルナールはそんな彼に酒を頼む。

 飲まないのも勿体無いな、とグラスを差しだせば、ベルナールが嬉しそうに両手で囲っていた。

「店はどうしたんだ?」

「美少年に任せてきた!」

「押し付けてきた、の間違いだろ」

「可哀想に」

「ひどいなぁ、フィンもユアンも」

 そう言ってウィスキーを舐めるベルナールは唇を尖らせ不服そうな顔をしている。それに呆れ顔を返していると、彼の瞳が真剣みを帯びた。

「おかしいことだらけだと思わない?」
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