悪しき令嬢の名を冠する者
「なんでもありませんわ」

「え……?」

「貴女は外に出て行って」

「お嬢様……?」

「一人になりたいって言ったのよ」

「ですが、そろそろ、お召し替えを……」

「早く出て行けって言ったの!」

 ヒステリックな声が劈く。メイドは慌てて一礼すると退室した。

 自分にも分からないことばかりなのだ。一人にして欲しいと、なんとか場を治めようとした結果がこれだ。人生はじめての怒鳴り声に、私は目を白黒させた。
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