悪しき令嬢の名を冠する者
「シュプギー……ですって……?」

「差出人の名前ですか?」

「……ええ」

「お知り合い、ではないですよね?」

「……ええ」

 念を押すかのように、じっとり言葉を紡ぐフィン。

 勿論、手紙の差出人は〝知り合い〟ではない。けれど〝シュプギー〟という名には心当たりがあった。

 心当たりなんて生易しいものじゃない。〝シュプギー〟は私の生まれ祖国。それも前世で過ごした国の名前だ。
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