悪しき令嬢の名を冠する者
 文面を読む限り手紙の主が敵か味方か判別出来ない。

 このタイミングで妨害を示唆する書面を送りつけてきているのだから、恐らく〝敵〟なのだろう。〝手折る〟という表現から、それが垣間見える。

 しかし〝あんな風に二度と死ぬことがないように〟〝幸せになってもいい筈だ〟ということは、私の最期を知っている人間に限定される。そうなれば前世での近しい人間が怪しい。

 おかしいのは〝手折る〟という表現をしておきながら、〝全力で止めにかかる〟とも綴っている点だ。

 そして最後に〝会いたい〟つまるところシュプギーは話をしてみたい、と言ったところか。

 何はともあれ私の他に転生者がいることは確かだ。それも〝味方〟とは言い難い厄介な人物が。

「皆、私のことを可愛いお嬢さん(フェアレディ)と言うのね」

 溜息を落とし、フィンに手紙を投げやる。「読みなさい」と顎で示唆すると彼は文字を目で追った。

「あんな風に二度と死ぬことがないように……? よく意味が……秘密というのはレジスタンスに加担しているということでしょうか?」

「だと思うわ」

 ココでの秘密は私の前世を指すが、わざわざ伝えることでもあるまい。

「要は忠告よ。レジスタンスに肩入れするのはやめて幸せになりなさいってね」
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