悪しき令嬢の名を冠する者
「最後の〝会いたい〟というのが気になります。それに〝睡蓮の君〟というのは?」

「さぁ。そこの意味は分からないけれど……」

「けれど?」

「いえ、なんでもないわ。まるでラブレターのようだと思っただけよ」

「そうですか。文面を見る限り危害を加える可能性がありますね。いつも以上に警戒しておきます」

「ねぇ、フィン。私、返事を書こうと思うの」

「……アンタは、またおかしなことを」

「敵か味方か見定める必要があると思うのよ」

「それは……そうですが。賛成出来かねます。第一どこに出すんですか? 送り先が分からなければ……」

「だから罠を仕掛けるの」

 私が窓の外を眺めていれば、フィンが溜息を吐いたのが分かった。ガラス越しに視線が絡む。呆れ顔の彼が透けていて、私はおかしくなった。
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