悪しき令嬢の名を冠する者
「護衛は外だ」

「……承知しました」

「フィン、いい子で待っててね」

「はい」

 馴れ馴れしく腰を抱くガストン様の手を抓ってやりたい衝動を抑え、擦り寄る。

 随分と華やかなもので揃えられた部屋に、私は深く息を吐き出したくなった。

「まぁ、こんなに沢山どうなさったの?」

 さも感動しているかの如く感嘆を漏らす。正直、贅沢には慣れているし、異国のものにも然程興味はなかった。

 それでも半年間、私の審美眼を磨いてくれたことには感謝している。逆に言えば〝それだけ〟なのだけれど。
< 86 / 374 >

この作品をシェア

pagetop