悪しき令嬢の名を冠する者
 天蓋付の寝台に並べられた各国のドレス。テーブルの上に鎮座する菓子と酒。カウチに展示される小物の数々。

 普通の女なら喜んで飛びつくのだろうが、私には何の感慨もない。

「君の為に揃えたんだ! 喜んでくれたかな?」

「ええ」

「それはよか……」

「とてもつまらないわね」

 満面の笑みを携え、この上ない屈辱を与える。今迄、言われたことがないだろう言葉を放ち、私は鼻で笑ってやった。
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