悪しき令嬢の名を冠する者

「随分、冷静なんだな」

「御自分がなさっていることを、よく考えてみたら?」

「また得意の〝お父様〟か?」

「そうね。私と婚姻を結びたいなら、こういうことは得策じゃないと分かるんじゃなくて?」

「もういいんだよ! 一度、女を抱いてみたかっただけなんだからな!」

「そうだと思っていたわ」

「ああ、だから……」

 衣服の裂ける音が聞こえた。目を瞠りながら恐る恐る視線を下ろす。

 胸元ははだけ、今日の為に認めたドレスは、彼の手によってボロボロになっていた。
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