不器用な暴君社長
ガチャっと、ドアが開いたと思ったら、いきなり腕を引っ張られた。
「きゃぁ!」
顔を思いっきり、なにかにぶつける。
「おせぇ。
何分経ったと思ってる!」
頭の上から声が降ってきて、ぶつかったのは社長の胸板だと気づく。
「す、すいません。」
「コーヒーが冷めちまうだろうが!」
「すいま…ん…?」
コーヒー?
部屋の奥を見ると、テーブルの上に、ケーキと湯気の立っているコーヒーが見えた。
「貰ったんだ!お前も食え!」
よくよく見てみると…
「Happyhoursのケーキだ!!」
私の好きなケーキ屋さんのケーキだった。
「た、食べていいんですか…?」
「食えと言っているだろう!」
社長はソファーにどかっと座った。
向かい合う形で、私も座る。
「いただきます!」
パクッと口に入れる。
お、美味しい〜!!
普段は少し高くて買えないから、自分で買う時は、いつも給料が出てから月に1度だけ買っている。
パクパクと口に運んでいると、目の前から視線を感じた。
「社長?どうしたんですか?
食べないんですか?」
コーヒーのカップを持ったまま、ケーキに手をつけていない社長を見る。
「俺は甘いものは嫌いだ。
お前はほんとに、ここのケーキが好きだな。」