君とのゲームの行方
 能天気に言う茜だったが、俺はそれに何も答えない。無言でただ画面を眺め、指先を動かす。

 ――なんなんだ、この女。てゆーか、なんでいきなりマ〇オカートなんだ。何度やっても、俺に勝てないくせに。他のゲームなら、勝率ほぼ100%のくせに、なんでマ〇オカートなんだよ。

 三周目にもなると、茜と俺の差はかなり開いていた。よっぽど俺がへまをしない限り、茜が俺に勝つことは不可能。すると、今まで“もう、むかつく”とか“バナナの皮踏めばいいのに”とか憎まれ口を叩いていた茜が、急に黙りだした。

 俺はちらりと一瞬だけ茜を盗み見る。茜は無表情だった。何を考えているのか、全く想像もつかない。俺は急に怖くなった。

 頼むから、いつものように小生意気なことを言ってくれ。憎まれ口を叩いてくれ。俺にゲームに勝って、調子こいたことを言ってくれ。

 直樹のところなんか、行かないでくれ。俺とこれからもゲームをしてくれ。……俺の側に、ずっといてくれ。

「……今日ね」

 ファイナルラップになってから、急に茜が口を開いた。
俺はびくっと身を震わせる。マ〇オはすでにゴール寸前。

「直樹に告られたんだ」
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