君とのゲームの行方
 すると、茜は素直に俺のくすぐり攻撃に反応し、悶える。昔からこいつはわきの下が弱いのだ。俺はそれをよく知っていた。

 茜は逃げようとするが、俺の攻撃が利いているらしく、うまく身動きが取れないようだった。俺は面白くなって、くすぐるのをいまだにやめない。

「ぎゃはははは! あは、あーははは! やめてくすぐったいぃぃ!」

 大声で笑いながら、茜がじゅうたんの上に仰向けに倒れ伏す。俺はしめた、と思い、追い討ちをかけるように覆いかぶさって、くすぐるという行為を続ける。

「ふははは。マ〇オカートを素直にやるなら、やめてやってもいいぞよ」

 大げさに得意げになりながら、俺は笑いを堪えて言った。しかし、それを言った直後に、重大な事実に突き当たる。俺ははっとして、茜をくすぐるのをやめた。

 目の前には、仰向けになっている茜。そして、その上に覆いかぶさる俺。気づいたら、こんな体勢になっていた。この状況のヤバさにぎょっとした俺は、反射的に茜の顔を見た。

 茜は俺より一瞬前に、この状態に気づいていたらしく、無言で俺をじっと見ていた。微かに睫が震えた。

 数センチ先に茜の顔がある。こんな距離にまでこいつに近づいたのは、小学校低学年以来だろう。あの頃は、一緒に風呂にも入った気がする。何も知らなかった、あの頃。
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