夏恋(ナツコイ)!

その腕が、後ろから「待てよ」と引かれた。

反射的に振り返ると、涙がこぼれて、

「……なんで、泣いてんだよ」

浩平がぼそりと言う。

「……だって、なんにも言ってくれないから……」

ぐしぐしと拳で涙を拭いながら口にすると、

「……バカか」

呟かれて、

「バカって、何よ……っ」

止まった涙がまたこぼれそうになったところを、

腕の中に、グッと抱き込まれた。

「……思ってるよ」

耳元で言われて、

「……思ってるって、何を……」

尋ね返した顎の先が、指で掬われた。

「……可愛いって」

触れるようなキスをされて、

「……言わせんなよ……」

重なり合う唇が深くなる。



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