溶けろよ、心

……えっ?

「3年生の他の先輩方はみなさんされますし……、僕も先輩の放送、もう一度聞きたいんです」


「で、でも……私は……」

戸惑った。もう、やらないつもりでいたから。

確かに放送部は楽しかった。だけど、人前で話すことに自信がついたかといえば、そうでもない。

校内放送とはわけが違う。体育祭は、保護者も地域の方々も含めた、大勢の前でアナウンスすることになる。


「ごめん、無理、かな……」

私がそう言うと、藤山くんは何度も頷いた。


「そ、そうすよね!すいません、無理強いしたみたいになってしまって」


「ううん、ごめんね。ありがとう。司会、頑張ってね」


去っていく藤山くんに手を振った。




その昼休みに、町田くんは現れなかった。
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