溶けろよ、心
「も、もしもし。町田くん?橘です」


「おう。体調大丈夫か?」


あの日のことは、細かいところまでは覚えていない。
けれど、町田くんに保健室まで運んでもらったことは覚えている。


「うん。もう元気。この間は、迷惑かけてごめんね。ありがとう」


「いや、大丈夫だよ。元気になってよかった」

2回目の電話。耳元で聞こえる声がくすぐったい。


「うん、先週ずっと教室に来てくれてたんだよね。心配かけてごめん」


「あー、知ってたんだ。…実は金曜も行ったんだけどさ、藤山くんいたから」


「あ、そうだったんだ」

藤山くん、そんなに長い時間はいなかったのにな。

タイミングが悪かったんだ。
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