溶けろよ、心

◎6歳




日曜日だもんね。空いてないか。


この日訪れたのは、もなか幼稚園。

門の扉は施錠されている。


中を覗くと、懐かしい園庭が見える。いくつか変わってしまった遊具もあるけれど、見覚えがあるものもたくさんある。




年少さんの頃、滑り台を晴斗がふざけて頭から滑ったことがあった。

そして、生え際のあたりを縫うほどの大怪我をした。


大泣きする晴斗を見て、私まで、わけも分からず泣きじゃくったのをよく覚えている。



次の日、包帯を巻いて登園してきた晴斗を見て、また号泣したんだよな。


そしたら、晴斗は「ごめんね」と言った。



今思えば、何に謝られていたのか分からないよね、という話を晴斗にしたら、

「なんでそんなこと覚えてんだよ。恥ずかしいから忘れろ」

と照れた。


その顔をまた見たくて、私はわざと何回もその話をした。
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