溶けろよ、心
「あっ!雲中(くもなか)先生!」


そこを通りすがったのは、年少さんと年長さんの時に担任だった、雲中先生だった。

まさか、覚えていてくれたなんて。


「お久しぶりです!」


「本当に久しぶりねぇ。今日はどうしたの?中、入っていく?」


「えっ、いいんですか?」


「もちろんいいわよ。卒園生だもん」

先生はそう言って微笑み、門の鍵を開けだした。


「もしかして、今は先生が園長先生なんですか?」



雲中先生のお母さんが、私の頃の園長先生だった。

この幼稚園は、園長の苗字が「くもなか」であることから、「もなか幼稚園」という名前がつけられている。


「そうよ〜。私はもう、雲中っていう苗字じゃないんだけどね」
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