溶けろよ、心
『うわあ!』
『わ!ちょっと〜!晴斗が走ってきたからでしょ!』
いい音を出して開いた蓋から、勢いよくラムネが飛び出した。
お母さんにバレて怒られないように、必死でティッシュで床やテーブルを拭いて。
2人して少し中身の量が減った瓶を、高く掲げる。
『乾杯!』
ドーン……。
乾杯と同時に打ち上げ花火が始まった。
『……綺麗だな』
晴斗はそう言うと、ラムネに口をつけた。
私も空を眺めながらラムネを飲んでいた。
『お前の方が綺麗だよ』
と、私がふざけて言うと、
『それは俺のセリフだろ』
って、晴斗は笑った。
ほら、君はすぐに思わせぶりな態度をとる。
2年前の、夏祭りの日の思い出。
口の中で、炭酸の泡が弾けて溶けていく。
窓から見上げる花火とリンクしているような気がしていた。