溶けろよ、心

「あれだな、お前といえば、社会科見学思い出すな」

緒方先生は遠くを見ながら呟いた。


「えっ?どこ行きましたっけ?」

「覚えてないのか〜。博物館、行っただろ?」

「ああ!実行委員やったやつ!」

晴斗と2人でやったんだ。


「そうそう。お前ら実行委員のくせに2人して迷子になってなあ」

「あはは、懐かしい」


「志賀は元気か」

「…はい、たぶん」

「そうか」


先生は笑った。何かを察した表情で。


そういう、優しい先生だった。
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