溶けろよ、心

まずは、清水寺へ向かう。

足を進めれば進めるほど、近づけば近づくほどに迫力が増してゆく。




同じクラスだったけど、違う班だった晴斗。

2日目は班ごとの京都散策だった。

班行動中、晴斗と何度もすれ違った。

何度も目が合った。


けれど、みんなの前で話さないという約束もある。

すれ違うたび胸が痛くて、どんどん心もすれ違っていくような気がした。


「覚えてるなぁ、ここ」


清水寺の近くのお土産屋さん。

私がお土産を選んでいると、晴斗の班もお店に入ってきて。

私は晴斗と目を合わさないように、店の奥で真剣にお土産を選ぶフリをした。


『真由ちゃん真由ちゃん』

同じ班の女の子に声をかけられた。

仲良くしてもらっていたけれど、以前のるいみたいに私は彼女に壁を作っていた。


きっとちゃんと話せていたら、疎遠にならず、今でも仲良くできていたんじゃないかと思う。

嫌な後悔を思い出した。
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