溶けろよ、心
バス停へ向かう。
あの日は、晴斗の班の班長の女子がバス停を間違えたんだっけ。
『み、みんなごめん!バス停ここじゃなかった!』
その子は顔を青くして、涙目になりながら謝った。
そりゃそうだ。12人も引き連れて、責任重大で歩いていたんだから。
みんなが、どうする?と顔を見合わせていると、晴斗が口を開いた。
『班長任せにしてた俺らも悪かった。本当のバス停どっち?早く行こうぜ』
『あ、あっち。…ごめんね、志賀くん。ありがとう』
『いいって別に。早く行こう』
晴斗が笑った。
笑いかけられた班長の子の顔がみるみる赤くなるのがわかった。
私はその時、自分にも嫉妬の感情があることを知った。
先を歩く晴斗を追いかけるその子。
悔しくて悔しくて仕方なかった。
喧嘩したまま、もう話せなくなったらどうしよう。
晴斗が私のことを嫌いになったらどうしよう。
急に怖くなって、友だちに声をかけられるまで足がすくんでいたのを覚えている。