溶けろよ、心


今日は、学校へ行く菜穂とパートへ行くお母さんを見送って、少しゆっくり家を出た。

なぜなら、今日は高校の近くに行く予定だからだ。
なるべく学校の人には会いたくない。

サボりを指摘されたらの言い訳なんて、なんにも考えていない。




10時。

いつもは自転車で行くところを、今日は電車で来た。

学校近くの商店街をキョロキョロ探しながら歩く。


前に来たのは2年半前。もう場所の記憶はなかった。


「あった……」

年季の入った看板が掲げられた制服屋。

高校入学前の春休み、私と私のお父さんお母さん、そして晴斗と晴斗のお父さんお母さん、6人でここに来た。

高校の制服を買うために。



お父さんには来なくていいって言ったのに、絶対に行くって聞かなかった。


『どうせ入学式で見られるのにね』
『それ!うちも父さん来るよ』

ここに来る前日、晴斗とそんなことを電話で話したっけな。
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