溶けろよ、心


制服屋を離れ、次は商店街にある花屋を目指す。


「いらっしゃいませー」

若い女性の店員さんに迎えられる。

そこに一歩踏み込めば、華やかな世界が広がっていた。いい匂いが鼻をくすぐる。

近くの高校に通っているはずなのに一度も来たことのない店。


「あの、すいません」

私はお目当ての花を見つけて、店員さんに声をかけた。


「これとこれ、花束にしてもらえますか」


「百合とカーネーションですね。かしこまりました。少々お待ちください」


花束を作ってもらっている間は花を見て過ごせば、あっという間に時間が過ぎた。
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