溶けろよ、心


午後5時頃だったという。

営業先からの直帰を許可された晴斗のお父さんは、久々に早く帰宅できることを喜んでいたらしい。



あと1分早ければ。あと1分遅ければ。


事故を免れることができたかもしれなかった。






私は晴斗のお父さんの訃報を、その日にお母さんから聞いて知った。


「明後日、お通夜があるからね」

高校一年生だった私。言葉としては理解出来た。

だけど、現実としては受け止めきれなかった。



そしてなにより、晴斗のことが心配だった。



昼休み、廊下ですれ違った時、ニヤッと笑ってきた晴斗。

今頃、どんな顔をしてるだろうか。


晴斗の気持ちは、想像しようにも出来なかった。
今までずっと。今だってそうだ。
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