溶けろよ、心

それから、ゲームセンターの入口にはズラっとガチャガチャ機が並んでいる。

私はここに来ると、ほぼ毎回ガチャガチャを回していた。


『何が面白いの、これ』

晴斗は、こんなのにお金を使うくらいなら、違うゲームで遊ぶ方がいいといつも言った。

『なんかさ、今日はシークレットが出る気がするの』

『毎回言ってんじゃん。そういう商法だろ。騙されてるよ』


晴斗は毒づきながら、私がカプセルを開けるのをキラキラした目で見つめていた。

本人は気づいていなかったけれど。



ある日ついに、ものすんごく貴重なシークレットが出たことがあった。

その時は私より晴斗の方がずっとはしゃいでたっけ。

周りのお客さんから変な目で見られて、晴斗の顔が真っ赤になっていたのも、思い出す度に笑いそうになる。





最後にここに来たのは、去年の夏。

この近くの道端で、晴斗がスカウトされた日だ。
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