溶けろよ、心
ショッピングモールを出て歩いてすぐ、駅近くのデパートに入る。
化粧品の独特の匂い。
デパートに来た!って感じがするこの匂いが、私は好きだ。
ブラブラと洋服を見て回る。
あっ、このサングラス……。
洋服屋の端に置かれた、サングラスやメガネたち。
私は、見覚えのあるその中の一つを手に取った。
『晴斗、見てこれ』
びっくりするほどレンズが長方形なサングラス。
角が尖っていて、シャキーンという効果音が良く似合う。
『ふはっ、真由掛けてみれば?』
『うん……どう、似合う?』
『おーかわいいかわいい』
晴斗は明らかに棒読みで言う。
『感想がおかしいでしょ。晴斗もかけてみて』
私が晴斗にサングラスを手渡す。
『どう?』
晴斗がレンズの上から二重の目を覗かせた。
鋭い視線にドキッとする。
『なんかめっちゃ喧嘩強そう』
素直になって、かっこいいなんて言えなかった。