溶けろよ、心
ぼーっと一点を見つめる私の目に、一つの人影が映った。
うちの学校の制服の男子生徒。
こんなところに同じ学校の生徒がいるなんて珍しいな、と思っていると、彼はいきなりこちらを向いた。
そして、いきなり私の元へ走ってこようとする。
「橘っ!」
久しぶりに聞くその声に、胸がドクンと反応する。
そこにいたのは、町田くんだった。
どうしよう。合わせる顔がない。
メールも電話も、後先考えず全て無視してきた。
それに、私はひどい。
晴斗の成功を心から願えない、最低なヤツだ。
こんな私を、優しい町田くんには見せられない。
「来ないで!」
走ってくる町田くんに向かって叫んだ。
町田くんは、私の言葉を気にもとめず、ブランコの柵をひょいと飛び越えて、その柵に座った。