溶けろよ、心
顔を上げられない。
視線が下にあることで見えた町田くんの腕は、少し会わない間に日に焼けていた。
「来ないでって言ったじゃん」
町田くんは、何も答えない。
何か言ってよ。
何分間かわからない沈黙が流れて、町田くんが口を開いた。
「…こっち向けよ、橘」
私は俯いたままでいる。
「こっち向けって」
町田くんの語気が強まっていく。
ジャリジャリという靴と地面が擦れる音がして、町田くんが私に近づいてきているのがわかる。
次の瞬間、私は両肩を町田くんにガシッと掴まれていた。